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January 21, 2008
第105号 悪魔のささやき
あなたは悪魔のささやきをきいたことがありますか? 囲碁をやっていると、いくつかの悪魔の甘いささやきが聞こえてきます。 一定の段階に達すると、誰にでも聞こえてくるのです。 一つだけではありません。 いろいろな段階、場面で聞こえてきます。 この悪魔のささやきに屈した人が 例外なく棋力のノビ悩みに遭遇することになるのです。 今回は悪魔のささやきの一つを紹介しましょう。 定石には本来は初心者向きの定石なんてありません。 有段者だって、プロだって基本定石を打つのです。 初心者向きの定石という意味は定石手順途中の変化が少なくて 途中でまぎれる確率が低いので初心者にオススメであるということです。 でも、そのような初心者向きの定石であっても、相手が定石はずれを打って くることがあります。 たとえば、初心者が最初に学ぶツケノビ定石。
白からAと出切るのは成立しないので、通常は白はAとは打ってきません。 でも打ってきたらどうしますか。 Aと出切るのは成立しないとは言っても、出切ってきたらそれを咎めるのは 大変、初段以上の棋力がないと咎めることができません。 これ、経験したことありますか? 取れたはずの隅の地を逆に取られ、散々な目に逢った経験をすると、 次の対局のときに 悪魔のささやきが聞こえてくるのです。 「白Aと打たれる前に黒Aと打って守ってしまえ!」 1手ムダですが、 あとを凌げば大丈夫という勝算があればこれもOKだ。 と思いますか? これをやってしまうと、 たとえ、その対局で勝っても、 黒Aと打って1手ムダにするところまでがあなたにとっての定石になってしまいます。 黒Aと打たなければ不安で、不安でたまらなくなります。 相手のムリ手を咎めるための複雑な手順を覚えるより 一手ムダ手を打って守る方が楽になってしまいます。 当然、咎める手順を覚えようとしなくなるし、 そしてこれが癖になって、級が上がっていっても これが直らなくなります。 こういうことを重ねていくと どんなに勉強しても1級で止まります。 先の棋力向上を目指すなら目先の勝ちにこだわるより、 相手のムリ手に応手し、間違えて、どんどん負けて下さい。 その悔しさをバネにして咎め方を覚えて下さい。 もちろん、すぐには覚えられません。 何度も覚え、何度も対局し、何度も負けて覚えていきます。 対局相手に負けることより、 悪魔のささやきに屈することのほうがはるかに恥ずかしいことなのです。 |