January 22, 2007
第17号 一手加えるべきか、手抜きすべきか
「画竜点睛」 聞いたことがあると思います。 竜の絵に瞳(ひとみ)を書き入れなかったために竜の絵が完成しなかったことから物事の仕上げの重要さを説いた故事成語です。 一方、蛇の絵に足を描いてしまった「蛇足」という故事もあります。 完璧なものに手を加えると、台無しになることがあるという意味です。 どちらも、もっともな話ですが、 「完成しているか否かの事実判断ができない人にとっては何の役にも立たな い。」 と言うのは意地悪な言い方でしょうか。 碁打ちの悩みは、 「一手加えるべきか、手抜きすべきか」 ですが、上記のどちらの故事成語もこの悩みに答えを与えてくれません。 やはり、その部分が一段落しているかどうかの判断が出来ていなければだめだからです。 その判断ができるためには、ただひたすら学ぶしかありません。 しかし、いくら学んでも完璧な人はいないので分からないときは当然ありま す。 そのときの対応には性格によって2つのタイプがあります。 もう、生きているのに心配で一手入れてしまうタイプ(蛇足タイプ)と、 その逆にまだ一手必要なのに手を抜いて他へ行ってしまうタイプ(画竜点睛タイプ)。 前者は一手パスと同じことですが大きな崩れにはなりません。 そういう箇所を一つずつ減らして行く事ができれば1目ずつ上達していける計算になります。 しかし、このタイプの人に棋力が伸び悩む人が多いのです。 念のため一手加えた手が正しかったかどうか検証することがなかなかできないからです。 後者の手を抜いてしまうタイプの場合は手抜きをとがめられてその対局ではボロ負けし、勝率は良くなりません。しかし、手抜きが間違いかどうかを検討できる機会を得ることができるわけです。 大器晩成、先々上達するのはこのタイプです。 自分の手抜きをとがめてボロボロにしてくれる対局相手は憎たらしいかもしれませんが、上達のための恩人なのです。 ただし、打ちっ放しで検討の機会を生かさなければ、伸び悩むのは前者と同じです。 |