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第204号 棋書と伝達ゲーム

ある情報を人から人へ口頭で伝えていくと、
とんでもなくその情報が変化してしまう、
ということがあります。

たとえば、
「まさる君は遠足に行きました」
という情報を次から次へと伝えていくと、

最後の人の所へ届いた情報は
「さるが木から落ちました」
になっていたりします。

「まさる」が「さる」になった時点で
次の言葉は
もう、ことわざのイメージで「木から落ちる」に
決まってしまいます、たぶん。

テレビのバラエティー番組などでも伝達ゲームのコーナーなど
でこういう事例はよく見たことがありました。


囲碁の本はなぜ、
次から次へと新刊が出るのでしょう?

新しい研究を発表するのなら分かりますが、
入門~中級向けの本では
基本という同じ内容しか扱っていないのに
様々な本が出ています。

これは
伝達ゲームに酷似しています。

基本の内容は同じ。
ルールを変えて説明しているはずありません。
なのに時代を経るごとにいろんな本が出版されます。


木谷實九段、
大竹英雄九段、
依田紀基九段、
羽根直樹九段・・・

の囲碁入門書の違いは何でしょう?

どんなにいい本と言われるものでも、
万人に分かりやすいと言うことはありません。
我々はひとりひとり、皆、
頭の構造が違うからです。

だから、みな自分にとって分かりやすい本を手に取れば
いいのです。

ただ、
私はこの中で
もっとも難しい木谷實九段の本が一番分かりやすいのです。
私は頭がいいんだよ
と言いたいわけではありません。

木谷實九段の囲碁入門書を見たら
現代の初段レベルの内容が書いてありました。
でも、本当は難しくないんです。
だって、基本しか書いてないですから。


私は数多くの棋書を読むうちに、
すべてとは言いませんが、
それらの原典が木谷實九段にあることに気が付きました。


後人が
それを分かりやすく加工して執筆していくうちに
内容がどんどん欠落し、
余計なものが付き、
中途半端なものになって
原典とは似て非なるものになっていきます。
伝達ゲームさながらに。

はっきり言って、
いじり過ぎ。
逆に劣化してしまいます。


さて、
次の世代のプロ棋士は
どんな囲碁入門書を書いてくれるのでしょうか。


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