トップページ >囲碁エッセイ> 第239号 伝える力

第239号 伝える力

先日、確定申告のセミナーに行ってきました。

講師は国税局の各部門の専門官や係長クラスのお役人。
係長といっても、
小さい会社の部下3人くらいの係長とは違って、
部下が何百人もいる一部上場会社の部長に匹敵するおえら方です。

税法を作成している現場の責任者がその年の税法改正の趣旨
や内容を直接解説してくれるので、又聞きの税理士の解説よりは
正確だし、要領を得ています。

そこで感じたことが1つあります。

それは「伝える力」です。


4人の講師の話のうまさにはそれぞれ優劣がありましたが、
総じて上手でした。

いやいや、税金の法律上の話ですから
決して面白くはないですよ。
特にお役人の話は形式的なので。

でも、話の内容は確実に伝わってきました。
それはなぜか。

4人とも税金に関する法律を作成する現場で仕事をしている人たちです。
今年は何を改正したか、どの改正を見送ったか。

それを現場で検討している当事者ですから、
内容や裏事情までよくわかっているのです。


だから説明が自分の言葉になっているし、
たとえ、テキストを読み上げる場合でも
話す本人が意味を分かって読み上げているので
話が伝わってくるのです。


以前、囲碁の学習ソフトを購入したことがあります。
解説が棋譜の右横に文字で表示されるのですが、

さらに
女性のキレイな声で読み上げ機能があるものがありました。

声はきれいで聞きやすく、最初はこれはいいと思ったのですが、
実はわかりにくかったのです。

声を担当した女性は美声の声優だったかもしれませんが、
明らかに囲碁を知らない人だったのです。

意味が分からず解説を読み上げていたから
伝わってこなかったのです。


アナウンサーが意味を理解しないまま、

ニュース原稿を棒読みしたらどうなると思いますか?




ということが池上彰氏のベストセラー「伝える力」

http://tutaeru.net/web/130206.html


に書いてあります。

音声を物理的にとらえるなら、
読み手が理解しているか、いないかによって
聞き手の理解に違いが生じることはないはずだと思いますか?


実は、棒読みだと
何を言っているのか視聴者に伝わらなかったということです。

・・・


これと同じだと思いました。

話がちょっと飛躍するかもしれませんが、
意味が分からず話した言葉が伝わらないのなら
意味が分からず打った定石も
役に立たないのではないか?

きっと、前に打った自分の石が
「なんでお前はそこに来たんだ?」
って、石同士が喧嘩します。

碁石の一つ一つは囲碁というゲームの中では
みな、一人の戦士です。

たとえ定石でも、意味も分からずに打てば
自分の打った石のそれぞれが
一緒になって戦おうと団結することもなくなり、
バラバラに散らばっている河原の石と同じになってしまいます。


意味をわかって打つからこそ、
石同士が連携し、お互いの意図をくみ取って、
戦いを有利に進めることができるのです。


(注)この記事は確定申告の始まる直前の2013年2月6日にメルマガで 配信されたものです。

00:40 | Page Top ▲