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第260号 打ったことのない手を打ってみる

勝つためにはどうするべきか。

勉強すべき!


それはそうなのですが、今回は準備ではなく
対局が始まったあとの話です。
つまり、対局中にどう打つべきかの話です。

多くの人が
1 行き当たりばったり、
2 手拍子で、
3 そのときの気分で、

打っていますが、
それで勝てると思う方がおかしいのです。
実はどう打つべきか、の選択基準があります。
これは大まかな道筋のことです。


定石の手順だとか
ここが手筋だとかいうことではありません。

そういう知識は地道に勉強していくもので
1局で一気に進歩したり解決したりするものではありません。

対局中、どう打つべきか、の選択基準は次の2つです。

1 必要なことをやる
2 やったことがないことをやる

両極端なこの2つが
その対局だけでなく
長期的に勝率を上げる方法です。

必要なことをやるというのは当たり前のことのようですが、
実際にはできない人が多いのです。

意味のないおどし手、
たとえば
意味のないアタリやノゾキなどは不要の手です。

相手が普通にウケたら、相手の形がしっかりしてしまうような攻撃
のことです。

相手が自分の打った手に対して驚いたり、
ウケてくれるのは
気持ちがいいし、
ある意味、必要なことではあります。
ウケてくれない場合は無駄手だった可能性があるわけですから。

でも、ウケた相手がいい形になったのではいわゆる「お手伝い」
になってしまいます。

これは打った瞬間は気持ちがいいかも知れませんが、
必要な手ではなく、むしろ打ってはいけない手です。
級位者で上達が止まっている人は
ほぼ全員がこういう手を打っています。


実際に必要な手というのは
あなたもよくご存じの
いわゆる「急場」と「大場」です。

急場の優先順位は次の順です。

1守らなければ自分の石が死んでしまう
2守らなければ自分の石の形が愚形にされてしまう
3攻めれば相手の大石を殺せる
4攻めれば相手の石を愚形にしてしまうことができる


守り、攻めの順です。
2と4は準急場とも言います。
純粋な急場ではないけれど急場に準ずるということです。

死なないけれど、悪形や愚形にされてしまうだけで
一気に形成不利になるので重要です。
級位者は準急場を軽視する傾向があるので要注意です。


急場の次に大場を打ちます。
1 大場は自分の地を大きくする
2 相手の地が大きくなるのを妨害する
の順ではなく、単純に影響する地の大きさで決めます。


対局中は行き当たりばったりで打つのではなく、
一手打つ時には
これらのことが頭の中に浮かんでいなければなりません。

ここまでは
出来ていない人が多いとはいうものの、
当たり前の話です。

次は一般には言われていないこと、
プロ棋士がそのような指導や記事、棋書の記述を
しているのをほとんど見たことがないのですが、

打ったことのない手を打ってみる
ということです。

これは思いつきで自由に打ってみるということではありません。


自分が今までに勉強した定石や打ち方ではないけれど
この場面ではこう打ってもいいんじゃないかと思う
ことはありませんか?



まじめな人ほど
定石じゃないからこれは打っちゃいかん
と自制してしまいがちです。

でも、
実はその手もありかもしれないのです。

自分が勉強した本には出ていなかっただけで
定石の一種だったり変形だったりすることもあります。
あるいはやはり間違った手かもしれません。

打ってみなければわかりません。


打ってみなければわからないと言っても
手あたりしだいに打ってみるということではなくて、
日頃研究したり、対局経験の中で
疑問に思っていることを実証するという意味合いです。

ただ、
打ってみて成功したら正しい手というわけではありません。
相手も間違っているかもしれないから。

それを確かめるのは定石事典です。


打ったことのない手を打ってみて、
それが正しいかどうかを
実戦対局と理論の両面から確かめる。

もし、やっぱり打っていけない手だったら、
打ってはいけない手として
暗記しなくても記憶に残ります。

暗記しなくても記憶に残る学習をどれだけできるかが
どこまで上達できるかどうかのの分岐路です。
暗記だけでは限界があります。

そして、
こういう実戦を伴う知識は
定石ではないから打っちゃいけないと漠然と知っているより
以後の対局で強靭な力を発揮します。


まどろっこしいようですが、
段位まで上達した人は
級位者のころから
そういう地道な研究を重ねているものなのです。


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