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第267号 ミスするなら大きなミスのほうがいい?

2000年にノーベル化学賞を受賞した
白川英樹博士のその発見のきっかけは
学生が間違って、
触媒を1000倍の濃度にしてしまった
ことだというエピソードがあります。


怪我の功名という言葉もありますが、
ここで注目してほしいのは、
1%濃度を間違えたとか、2%間違えたとか
ではなく、1000倍間違えたという点です。


研究者は通常の場合、
1%どころか、0.1%とか0.01%とか
そういう微妙なレベルで変化を与えて
実験を繰り返すことが多いものです。

化学よりもっとおおまかな事務の仕事で言えば、
説明書を1000ページから
1200ページに増やそうか、
800ページに集約しようかと
検討することが多いと思います。


白川英樹博士の研究室の学生の間違いを
これにあてはめれば、

1000ページの説明書を
100万ページに増やすか、
1ページのサマリーシートにまとめてしまうか
という発想になります。

普通の人はできない発想です。


もちろん、小さな変化が大きな結果変化
を生む場合もありますが、
予想もしない大きく異なるところから
新しい発見がなされることも多いのです。


筋のとなりはヘボ筋
という白江治彦プロの創作格言があります。

囲碁ではとなりというのは
わずかな違いという意味で、
わずかな違いが大きな結果違いを生む
という意味の戒めの格言です。

手筋においては、これは
肝に銘じておくべき名格言だと思います。


囲碁において一手一手の細かい違い
を緻密に学習していくことは
もちろん大切です。



ところが囲碁世界でも
すべてのことに緻密に小さくこだわる人が
意外と上達が遅かったりします。


いつだったか、
囲碁を始めたばかりの人の打った手を見て
定石では見たこともない奇手(もしかして誤手?)なのに、

「これもありかも。」
と思ったことがあります。


もちろん、棋理に反した手はダメです。
でも、特に中盤では思いもしない発想の手が
ベストだったりすることがあります。

まさに
中盤に定石なし
という感じです。

囲碁を長くやって、しかも、
しっかり勉強すればするほど
1路違いの近隣の手を検討することが多いです。


「天頂の碁」以前の弱い対局ソフトの
発想がまさにそうでした。

だから初段の強さを実現するのに
開発年数20年もっかってしまったわけです。


「天頂の碁」は思考法を変えただけで
あっという間に5~6段レベルの強さを
実現してしまいました。

アマの場合の「間違い」とかミスは
1路ずれた間違いをおかす人より
とんでにない大きな誤手を打つ人の方が
のちに上達することがあります。



日本人の習性として
小さいミスはおとがめなし、
大きいミスは責任問題
ということが多いのですが、

囲碁の場合は大きなミスをしたほうが
いいような気がします。


それはそのミスを是正したときの
効果が大きいためと

そもそも大きなミスには間違いというより
発想の違いを意味することもあるからです。



たまたまそれがミスだったとしても、
部分にこだわらずに
大局観とかを考慮しての間違いなら

大局観がない人より
素質的にいいものを持っているということも
あるかもしれないからです。


どうせミスをするなら
こじんまりとミスするより

スケールの大きいミスをした方が
上達するのではないか

と思ったりするのです。



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