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第292号 定石はずれ・ハメ手、そして・・・悪力

悪力という言葉をご存知でしょうか。

いかにも囲碁用語っぽいのですが
囲碁テキストにもありませんし、
辞書にもありません。

なんて読むんですか、とか聞かれても辞書にない言葉なので
答えられませんが、
握力と混同しないように、
私は「あくりき」と読んでいます。

良くは知らないのですが、発端はこの棋書
の造語なのではと考えています。

⇒ http://tutaeru.net/web/140521b.html  

(注:非常にレベルが高いので安易に購入されるなかれ)


悪力という漢字の意味から
なんとなくイメージは沸くのではないかと
思いますが、正式な言葉ではないので
どのように理解しても
どのように定義付けしても勝手なのではないかと
思います。

誰でもが思い浮かぶのが
定石はずれやハメ手だと思いますが、
厳密には似て非なるものです。


定石はずれは相手に正しく対応されると
自分が崩れるという完全な誤手のこと。

ハメ手は定石はずれとよく似ていますが、
もうちょっとレベルの高いもので、
定石に限らず、様々な局面において
相手の無知に頼るだけでなく、
相手の欲を引き出して蟻地獄に陥れる手
という感じでしょうか。

ハメ手は相手に正しく対応された場合でも
必ずしも自分が崩れるとは限りません。


ハメ手を相手を騙す手だと説明しても
間違いではないと思いますが、
卑怯な手、ルール違反ということではないので
誤解の無いようにしましょう。

いずれにしても私は
定石はずれもハメ手も
囲碁上達の糧になる優良な囲碁教材であると
前向きに捉えています。

ところが「悪力」となると
定義のないものであるだけに
調べてもさまざまな情報が交錯・・・
ではなくて逆に情報がないのです。

造語本家の棋書の内容では、
古碁や現代の趙治勲九段などプロ棋士の棋譜例なども
挙げています。

個人的には淡路修三九段や宮沢吾郎九段などの力戦派
の棋士が思い浮かんでしまいます。

この棋書でも趙治勲九段の強烈なシノギの例を
挙げていることを見ると、
著者は形や棋理を無視したその局面にだけに通用する究極のヨミ
も悪力のひとつと考えているのかもしれません。

このことから必ずしも、
悪力=悪い手
ということではなく、

悪力=現在における究極の戦いの手

であり、現在発見されていない場合でも、
とがめる手があるはずと言いたいのかもしれません。


ボクシングでいうなら「悪力」は
フットワークを活かして
相手のパンチを避けながら、
相手の隙を見てパンチを当てる正統派ではなくて、

棒立ち、ガードなしの状態で
力まかせに打っているイメージに近いのかもしれません。

それでも別にルールー違反でもないし、
その時のコンデションにおける
対策がそれしかないのならそれが正しいし、
まぐれでもパンチが相手にヒットして勝てば
正々堂々のチャンピオンにもなれます。

囲碁においても
形が悪かったり、たとえ棋理に反する手であっても
それを打ち負かす手を打てる相手がいなければ、
最強の手ということになります。


現実の世界は
タイトルなど頂点を極めた棋士の打つ手が暫定的に正しい、
つまり、
強さ=正しさ
ということになるのでしょう。

それが悪力の正体なら
悪力とは
囲碁の研究が未完成である現在における
最強仮説の一つに過ぎないとも言えそうです。



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