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第304号 例題と問題の違い

棋書にもいろいろあって、大きく分ければ
教科書的なものと問題集的なものとがあります。

囲碁には教科書がない
という話をしたことがあるのですが、
それは定番の基本書がないという意味で、
ここでいう教科書的なものとは
問題集ではなく、解説を中心としている棋書
という意味です。
解説本と言った方がわかりやすいかもしれません。


解説本が好きという人はかなり勉強(研究)好きな人で、
放っといても一定のところまでは
一人でどんどん上達するタイプの人ですが、
全体としてはあまり多くはないと思います。

解説本はやる気とか意欲とかが旺盛でないと
なかなか読破できないし、
一人で勉強するというのは精神的につらいものがあり、
途中で挫折してしまうことが多いのです。


その精神的な部分をなんとか持ち直し、
勉強を続けるために威力を発揮するのが
問題集タイプの棋書です。

問題集タイプの棋書というのは
さあ、解けとばかりに問題を提起され、
答えを出せば、解答と解説が提示され、
あたかも囲碁教室で教えてもらっているかのような
感じになります。
擬似囲碁教室でしょうか。


この問題集タイプの棋書の学習効果を
私は評価しています。
独学でも勉強を進めやすくなるからです。
ただ、最近感じていることがあるのです。

典型的なのは詰碁の問題集ですが、
これは以前にも言及したことがあります。

「黒先生き」とか「黒先白死」
というのは結果がわかっていて、
そこに至る過程を考えさせるものです。

ところが、実戦対局では
碁盤上に「黒先生き」と表示されるわけではないので
よくよく考えてみれば、こんな非現実的な勉強法はないわけで、
だったら、詰碁を作ってみる研究法の方が
過程と結果を同時進行で研究するので、
はるかに勉強になるわけです。

さらに、布石の場合でも
次の一手を選べという題意で4つほどの選択肢が
与えられるお馴染みの問題形式が圧倒的に多いのですが・・・

布石問題集の場合は通常、
「急場と大場の選択」のような分類、小見出しがつけられて
問題が掲載されます。

体系的に同じ部類の問題ごとにグループ化する
という工夫でもあるのです。

しかし、そうすると、
4つの選択肢のうち3つはどう見ても、
隅のカカリや辺の中央などの大場であり、
それを見ただけで、消去法で
残り1つの選択肢が検討しなくても
「急場」であり、正解であることが
容易に分かってしまいます。


読者は囲碁の思考をしているというより、
各選択肢の相違点から正解を当てる
という推理に走ってしまうこともあります。

それでも、棋譜図や解説をよくよく味わえばいいのですが、
結果だけで解けた、解けたと喜んで安易に先に進んでしまうと
実はまったくわかっていなくて、
実戦ではいつも変なところに打っていたりするわけです。

あんなに勉強したのに昇級しないな・・・
ということになってしまいます。


「急場と大場の選択」とか見出しをつけてしまったために
それは問題集ではなくて例題集になってしまっているのです。
著者はどちらのつもりだったのでしょうか。
そして読者はどちらだと思って購入したのでしょうか。

親切なようでも、このような見出し付けは
利用者の考える機会を奪っている面もあるのです。


例題と問題集は明らかにその目的が違います。


例題というのは教科書の基本理論を学んだあと、
その実例や典型例などでその理論の理解を
身に付けるためのものです。
理解させ、覚えさせる目的なので
答が見え見えでもいいのです。
むしろ、見え見えのほうがいいのです。


これに対し、問題集はどのような場面でも
正しく応手できるようにするための
実戦応用トレーニングを目的にしています。


囲碁の場合は特に、
問題集のレベルまで到達しないと
最終目的である実戦対局で役立つというところまで
達しないわけです。


ちまたに溢れている問題集は
実は問題集という名の例題集が多い
ような気がします。

簡単に言ってしまうと
タイトルや小見出しをつけて編集した問題集は
例題集です。

囲碁雑誌の棋力判定テストはほぼ問題集と言えるでしょう。


問題集と例題集のどちらがいいか、
ということではなくて、

問題集か例題集か。
そういうことを意識しないで
問題集タイプの棋書を勉強していると、
思ったほど効果が上がらないことが多いのです。



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