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第318号 囲碁格言を確率で考える危険

囲碁格言は正しい手を打つために
たいへん参考になるものです。
プロ棋士によって書かれた
囲碁格言を解説した本も
たくさん出ています。

ただ、初級者から中級者くらいの人は
よく、錯覚をしている場合があるので
注意が必要です。

囲碁格言を定石と同様に考えてしまっている
人がかなり多いようなのです。
囲碁格言はそれに従って打っても可ならずしも
正しい手となるとは限りません。

私はよく次の2つの一般格言を例にして
説明することがあります。
(1)虎穴に入らずんば虎児を得ず
(2)君子危うきに近寄らず
これらはまったく逆のことを言っています。

格言やことわざには
このように相反することを言っているものが
併存していることが多いのです。

囲碁格言も「格言」というくらいなので
同じ面を持っています。
こう言うと、格言なんていい加減なもので
当てにならないものだということになりそうです。

囲碁格言はそれぞれ当てはまる確率が異なり、
8割くらい当てはまるものもあり、
また5割程度しか当てはまらないものもあります。

8割当たるのなら信じてもいいかもしれないけれど、
5割ということは当たるも八卦、当たらぬも八卦
というわけで占いとたいしてかわらないことになります。

5割では、
前述の(1)虎穴~と(2)君子~
の格言のようなものです。


また、5割りを切ったら、それはもう格言としては却下される
程度の物ということになりそうです。

ここから言えることは、
囲碁格言は棋理のように100%正しいものではない
と認識すべきだということです。

定石はどうか、というと
部分においてはほぼ100%正しいと
言っていいのではないでしょうか。

このように一般的にも
格言を確率で考えることが多いのですが、
実はこれは大変危険なことなのです。

(1)虎穴~と(2)君子~
の格言を例にすれば、
相反する格言が併存するから、
いい加減なものだ
と考えてしまいますが、
本当は矛盾したものではないのです。


つまりこの2つの格言は
想定している前提が違うのです。

囲碁の場合でいうなら
リードされている状態なら
⇒虎穴に入らずんば虎児を得ず

という格言は的を射ており、
思い切った逆転の可能性のある手を打って
相手の応手を待つのが最善手になります。


しかし、
リードしている状態なら
⇒君子危うきに近寄らず

という態度が的を射ており、
わざわざ危険な手を打たずに
リードを守りきる安全な手に終始する
のが正しい打ち方となります。

つまり、
囲碁格言は確率が高いからそうすべき、
とかいうものではなく、
周囲の状況や形勢によって
使い分けるべきものなのです。



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