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第7号 相手によって打ち方を変えるな

私が8級のころの話です。
日本棋院(本院)の「級位者の日」という対局に月3~4回通っていました。市谷の駅からゆるい坂道をのぼって行きます。
「ヒカルの碁」の日本棋院の描写は本物によく似ています。

その日の最初の相手は年配の紳士で10級でした。
事務局では原則は同じ級の人を組み合わせてくれましたが、いない場合には2級差までの範囲で組み合わせを行っていました。

このレベルでは置き碁でハンデはきちんとつけていても上手(うわて)のほうが有利という傾向があって、置き碁の勝率は上手(うわて)のほうがかなり高かったようです。

今日は第1戦勝ちかな・・・

しかし、決して強い相手だとはとは思わなかったのですが、打ち終わってみると私の方が10目程度足りませんでした。


対局が終わるとすぐ席を立つ人もいれば、検討に付き合ってくれる人、さらに世間話までしていく人などいろいろな人がいて、これがまた楽しいのですが、その紳士は、
「あなたの方が強かったと思いますが、10級相手だからというわけではないでしょうが、ちょっと手が緩んだみたいですね。」
・・・と話しはじめました。

図星でした。
その紳士も以前下手に負けたときに同じアドバイスを受けたことがあったそうです。
「相手によって打つ手を変えてはいけない。」と。

この相手なら、この定石は知らないだろう。欲張った定石はずれを打っても対応を知らないだろうからとがめずにウケてくれそうだ・・・

逆に、そこまで厳しく打たなくても大丈夫だ・・・等々

相手をなめているわけではないのですが、
少し勉強が進むと、こんな悪魔のささやきが聞こえてくることがあります。
その声に従うとそのときはうまくいっても悪癖がついて上達の芽が摘まれることになります。

以来、私は相手が誰であろうと、棋力差がいくらであれ、正しいと信じる手しか打たなくなりました。
いい対局相手にめぐり会えました。


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